代表取締役社長倉嶋 進
皆様には、平素よりひとかたならぬご支援を賜り厚く御礼申しあげます。
超高速大容量通信を実現する情報通信基盤の進化やAI、IoTの急速な利用拡大等を背景とするDX(Digital Transformation)の進展が、経済や社会の仕組みに大きな変化をもたらし、これまでとは次元の異なるイノベーションを生み出す可能性を秘めており、半導体は、その可能性を実現するキーテクノロジーとして革新を続けていくことが期待されております。また、自動運転等の技術開発が加速する自動車市場や多様な分野での活用が期待されるロボティクスなど、半導体は、今後も市場を拡大することが見込まれています。加えて、GX(Green Transformation)の実現に不可欠なテクノロジーの進化を支えるキーデバイスとして、半導体のニーズはさらに高度化・多様化することが想定されます。
当社グループは、半導体デバイスの優れた機能を人々の生活のなかへともたらすインターコネクトテクノロジーをベースに、高い競争力を持つ製品の開発に努め、お客様にとって価値の高い製品・サービスをご提供することにより、お客様の成功を支え、自らの発展・成長を目指してまいります。
また、当社グループの企業理念・指針である「SHINKO Way」の実践を通じ、ステークホルダーの方々との調和をはかるとともに、気候変動をはじめ、多様なサステナビリティ課題に対する取り組みを推進してまいります。
2024年3月期におきましては、パソコン、スマートフォン需要低迷や在庫調整の長期化等を背景とする半導体市況回復の遅れの影響を大きく受けるなか、収益確保をはかるべく受注獲得および生産性向上、コストダウン等に注力しました。また、これまで継続的に取り組んでまいりました成長市場向けの設備投資については、市況環境をふまえ、計画の一部見直しを行いましたが、半導体市場の中長期的な拡大や当社製品の今後の需要増加を見据え、引き続き重点的に経営資源を投下しました。半導体の一層の高機能化・高速化や省電力化等のニーズに対応するフリップチップタイプパッケージについては、新たな生産拠点として千曲工場(長野県千曲市)の工場建屋が竣工するなど、生産体制強化に向けた取り組みを推進しました。また、先端半導体向け次世代フリップチップタイプパッケージに関する千曲工場における新たな設備投資計画が、「経済安全保障推進法」に基づく「供給確保計画」に認定され、助成金の交付が決定されました。プラスチックBGA基板については、生産能力増強をはかるべく、新井工場(新潟県妙高市)において新棟建設に着手しました。
これらの結果、フリップチップタイプパッケージは、パソコン・サーバー需要の回復の遅れ等により売上が大きく減少しました。また、セラミック静電チャックは半導体輸出規制に加え、市況悪化の影響を受け売上が大きく減少するなど、総じて市況低迷の影響を受けました。これらにより、売上高は2,099億72百万円(前連結会計年度比26.7%減)となりました。利益面につきましては、売上高減少の影響を大きく受け、経常利益は272億57百万円(前連結会計年度比65.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は186億9百万円(同65.8%減)となりました。
今後の半導体業界は、AIを活用したサービスの急速な拡大等を背景に、メモリーをはじめとして半導体需要の回復が期待されるものの、パソコン、サーバーおよびスマートフォン市場の回復の遅れや半導体の在庫調整がさらに長期化する懸念が払拭できない状況が継続することも想定されます。一方、DXの進展等による社会・経済のデジタル化や、持続可能な成長の実現を目指す脱炭素社会への移行と情報通信量の大幅な増加による電力消費の抑制を両立するGXの実現を支えるキーテクノロジーとして、半導体の重要性が高まるとともに、高度化・多様化する市場のニーズや需要動向の変化に対し、迅速かつ柔軟に対応し得る開発・生産体制を構築することを要するなど、世界規模での競争が一段と激化することが見込まれます。また、半導体のさらなる高機能化・多機能化のニーズへの対応をはかるうえで、半導体製造におけるパッケージングプロセスの重要性が高まっており、特に、当社が主な事業内容とする半導体パッケージは、半導体の一層の高機能化・高速化と省電力対応に欠くことのできない中核製品として半導体産業におけるニーズがさらに高まることが想定されます。
このような環境の下、当社グループは、営業体制の一層の強化に努め、市場環境の変化を的確に把握し、積極的な受注活動を展開することなどにより売上確保をはかるとともに、全社において生産性向上・効率化、徹底したコストダウン等の取り組みを強化してまいります。また、これまで高い成長が見込まれる市場向けに継続的・重点的に経営資源の投下をはかってまいりましたが、市場環境をふまえ、必要により時期・内容を適切に判断のうえ、引き続き当社製品の中長期的な市場拡大を見据えた設備投資を展開してまいります。フリップチップタイプパッケージについて、2023年12月に竣工した千曲工場(長野県千曲市)における量産体制整備等をはかるとともに、半導体メモリーの高速化・大容量化に対応するプラスチックBGA基板については、新井工場(新潟県妙高市)において着工した新棟建設を着実に実行してまいります。加えて、中長期的に大きな成長が見込まれるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)市場のニーズに対応する当社開発の「i-THOPⓇ」をはじめとする先端半導体向け次世代フリップチップタイプパッケージの千曲工場における新たな設備投資計画を推進してまいります。また、次世代情報通信基盤の構築における基幹デバイスとして、消費電力の飛躍的な低減とデータ処理の超高速化を実現する「光電融合デバイス」の開発に注力するなど、これまで培ってまいりました最先端の半導体実装技術をもとに、市場ニーズを先取りした新商品・新技術の確立・量産化に取り組み、持続的な成長・発展を目指してまいります。
当社グループは、引き続き成長が見込まれる半導体市場にあって、常にお客様のニーズを起点とし、機能・性能、コスト、品質すべてにおいてお客様にとって価値の高い製品・サービスを提供することにより、「限りなき発展」を果たしてまいる所存であります。